北杜夫「幽霊」をまた読む
11月3日に新潮文庫の「幽霊」をamazonで注文したが、届いたのは20日であった。裏表紙を開けると今年11月10日付の第56刷である。帯に「追悼 北杜夫」とあり、カバーの著者紹介でも(1927-2011)となっていた。高校生時代以来の再読である。
最初読んで、かなりインパクトを受けたと自分では思っていたが、今読み返すと、あちこちで断片的に強い印象を受けたに過ぎなかった。虫の描写、わからない地名など、すっとばしただろと言われても反論できないくらい、当時何も頭に入っていなかった。現在の方がネットで地図も参照でき、山岳の絶景も蝶の模様も調べられ、理解の助けになる情報を多く持っている。ただ、高校生の時は幼年期の自分の記憶を紡ぎながら読むことができた。45歳になったら逆立ちしたって幼年期の記憶が全然出てこないのはどうしたことか。
幽霊のサブタイトルは「-或る幼年と青春の物語-」である。確かにそうだけど、この種の孤独、この種の異性への憧憬は(幻想を伴わないにせよ)40を過ぎても自分の中には時にあらわれる。クライマックスの岩場の場面は、自分はそこへ行ったことがないにもかかわらず、そこに立ち上がるであろう幻影については、妙に確かな想像ができてしまっている。
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