コンパクトシティと名古屋
拙稿 "雑誌「city & life」を読んだ 2"の続きです。
クルマが多すぎて、最もコンパクトシティに程遠い感じがする中京圏ですが、昨年夏に東区や西区の住宅街・商店街を歩いた時、初めてそれまでとは違う印象を受けました。それをもとに書いてみます。ですから、名古屋の本当の中心部、名駅・栄近辺などに関しては考慮しておりません。
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名古屋の100m道路は有名だが、それ以外にも高い密度で幅員数十mの大通りがある。多いところでは300~500m歩くと次の大通りが現れる。車道のみならず歩道も広く、多くの場合歩道内に自転車通行帯が付設されている。大通りに沿った方向への移動については、自動車・自転車・歩行者ともに利便性が高い。
昨年夏、大通りから裏に入ってブロック(街区)の中を歩き回る機会を得たが、その時の空間の静けさには驚いた。歩行者・自転車がのんびり通行している。とあるどんぐり広場の入口で、おばあさんが腰掛けて涼んでいる。どんな狭い道にも車が入ってくる関東の大都市より、よほど安全であった。幹線道路の車線を可能な限り増やし、車にとって快適な通行を「大通りで」保証した結果、ブロック外部と内部で自動車と人がおおかた分離され、ブロック内での安全をもたらすことにもつながっているとも思える。
もちろんそれは、良い影響ばかりを生み出すわけではない。顕著なデメリットのひとつは、大通りを横断する歩行者・自転車の負荷の高さである。青信号の途中で渡り始めたら、思わず真剣に走ってしまう。速く歩けない高齢者・子供の恐怖感はいかばかりか。これは、大通りをはさんで隣接するブロックにさえ容易に移動できないことを示している。さらに、交差点でないところでの横断に危険を伴うため、交差点までの迂回が発生する。歩行者にとって、このロスも些少ではない。
以上の事柄を、コンパクトシティの考え方に照らし合わせてみたい。
- 自動車・自転車を運転できない人や、外部から公共交通機関で訪れた人のブロック間のモビリティ(移動性)が低い。街としての機能の複合化をめざすのであれば、これを高めることが必要である。現状では多様な機能を担う施設が、別々のブロックに散在しているからである。
- 逆にいえば、ブロック間のモビリティを高めることが可能であれば、ブロック内を走行する自動車が少ないことを考えても、トランジットモール社会実験等を行うのは却って容易かもしれない。平坦で自転車も走りやすいし。
私は、この歩行者等のブロック間モビリティを高める手段として、自転車タクシーを導入してみたらどうかと提案したい。提案するだけですけど。
昨年の愛知万博開催時期に合わせて試験的に導入されたベロタクシーが、どのように運行され、どのような評価を得たか、よくわからないのだが、比較的安価で導入・利用できる、騒音が少なく住宅地内の利用にも適する、等のメリットがある。極端な話、大通りを横断するだけの渡し舟のような運行形態でも、そこそこ需要がある可能性がある。
横断に際して交差点までの迂回が必要となる地点の運行に関しても、出発地-目的地間の「直線距離」で運賃計算を行えば合理的だ。カーナビを搭載、地図を表示して瞬時に直線距離を割り出す仕掛けを用いれば、その点でも堅実な名古屋の人の支持を得られるかもしれない。
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以上です。
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