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2004.05.15

いろんな人がいる

藍川由美著「これでいいのか にっぽんのうた」読みました。
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ソプラノ歌手である著者が、日本語の発音に関して持った疑問から発した調査の数々。その広範さ・詳細さには、ただ敬服する。

明治・大正期の日本のうたのあゆみ、個々の歌の歌詞・記譜の変更点、昔からの日本語の発音の変遷について、膨大な情報に接するだけでも、正直読んでて楽しかった。小関裕而にまつわるエピソードとか、イギリス人エリスの記録による、12平均律と微妙に異なる日本の音階の周波数とか、学校唱歌の伴奏に撥弦楽器を用いたらという提案とか、部分的にすごく面白いところが散りばめられているのだ。
ただ、著者のいう「正しいものとはこうだ」「これが美しいのだ」という主張に対して、読者である私は最初から最後まで、ずっと違和感を感じることになった。
その違和感を要約すると、以下の2点になる。○厳格すぎる。著者の提唱する「舞台語発音」の基準を、明治・大正期あるいはもっと以前の日本語の発音に置くことに、もともと無理があるのではと思われる。○政府・学校・作詞者・作曲者・歌手・レコーディングに携わる人・マスメディア等の、音楽の「送り手」がどうした、という記述に終始しており、「聴き手にどんな音楽が流れていたか、どんな音楽が求められたか」という観点からの記述がほとんどない。いくら美しかろうが正しかろうが、聴く者にとって不自然であれば、現在においては定着しないであろう。
著者の歌唱を「いっぺん」聴いてみたい、とは思う。昔の曲ばかりでなく、「カリメロ」とかもけっこう気になる。10年くらい前に読んだ、小倉朗著「日本の耳」を、また読んでみたくなった。

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